世界の馬文化 — モンゴル・アラブ・スペイン

Photo: Gallop Journal Editorial — 世界の馬文化 — モンゴル・アラブ・スペイン
馬は世界中で人と共に生きてきた。モンゴルの草原、アラブの砂漠、スペインの闘技場——それぞれの文化が育んだ、馬と人の関係を旅する。
馬は人類の歴史と切り離せない。しかしその関係の形は、文化によって驚くほど異なる。草原の遊牧民にとっての馬と、砂漠の民にとっての馬と、ヨーロッパの貴族にとっての馬は、同じ動物でありながらまったく異なる意味を持ってきた。世界の馬文化を旅することは、人類の多様性を旅することでもある。
モンゴル — 馬と生きる遊牧民
モンゴルでは「モンゴル人は馬の背中で生まれ、馬の背中で死ぬ」と言われるほど、馬は生活の中心にある。モンゴル馬は体高が低く(約140cm)、サラブレッドと比べると小柄だが、その持久力と適応力は群を抜いている。マイナス40度の冬も、草を掘り起こして自力で食べ、猛吹雪の中でも生き延びる。チンギス・ハーンがユーラシア大陸を席巻できたのも、このモンゴル馬の驚異的な耐久性あってのことだ。
毎年7月に開催される「ナーダム祭」は、モンゴル最大の祭典で、競馬・相撲・弓の三種競技が行われる。競馬では5〜13歳の子どもが騎手を務め、20〜30kmの長距離を走る。馬の速さより持久力を競うこの競技は、草原での実用的な能力を測るためのものだ。
アラブ — 砂漠が生んだ最高の血統
アラビア半島は、世界で最も古い純血種のひとつ「アラブ種(アラビアン)」の故郷だ。アラブ種は砂漠の過酷な環境の中で、何千年もかけて自然淘汰と人の手による選抜を経て生まれた。現在のサラブレッドの祖先もアラブ種であり、その血は世界中の競走馬に受け継がれている。
アラブ文化において馬は財産であり、家族の一員だった。ベドウィンの遊牧民は馬をテントの中に入れて一緒に寝ることもあったという。アラブ種の特徴は、ドーム型の頭部、大きな眼、高く掲げた尾、そして砂漠の乾燥した空気に適応した広い鼻孔だ。その美しさは今も世界中の馬愛好家を魅了している。
スペイン — 馬術芸術の殿堂
スペインは西洋馬術の聖地だ。16世紀に設立されたウィーンのスペイン馬術学校(Spanish Riding School)は、スペインからもたらされたリピッツァナー種を使った馬場馬術の最高峰として、今も世界中から観客を集めている。その名に「スペイン」を冠するのは、この馬術の技術と馬がイベリア半島から伝わったためだ。
スペイン南部のアンダルシア地方は、「プレ・イベリコ(PRE)」と呼ばれるスペイン産馬の産地として知られる。バロック体型の優雅な馬体と、高い知性・気性の良さで知られるPREは、馬場馬術・障害飛越・ショーなど幅広い用途に使われる。フラメンコと馬が融合した「馬のフラメンコ(Equestrian Flamenco)」はスペイン独自の芸術表現で、音楽・舞踊・馬術が一体となった唯一無二のパフォーマンスだ。
日本 — 武士と馬、そして現代へ
日本における馬文化の歴史も深い。古墳時代に朝鮮半島から伝わった馬は、やがて武士の象徴となった。流鏑馬(やぶさめ)・笠懸(かさがけ)・犬追物(いぬおうもの)——これらの騎馬武芸は、武士の訓練であり、神への奉納でもあった。現代でも神社の祭礼で流鏑馬が行われ、馬と日本文化の深いつながりを示している。
世界を旅すると、馬はどこでも人の「最も近くにいた動物」であることがわかる。移動手段から農耕の動力、戦争の道具、芸術の対象——馬は時代と文化によって役割を変えながら、常に人の傍らにあり続けた。その歴史の重さが、馬という動物の持つ独特の存在感をつくっているのかもしれない。
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